金融市場ラインマーカー

米国政策金利据え置きと長期金利の行方

2009年06月29日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

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金融市場動向

米連邦準備制度理事会(FRB)は、政策金利の誘導目標を現行通りの0%~0.25%に据え置き、国債等の資産買取目標を現行の総額1兆7500億ドルに据え置くことを発表しました。 長期金利は、国債の需給懸念や景気回復期待およびインフレ期待から上昇していますが、本格的な景気回復や物価高騰の可能性が低い環境では、断続的な上昇基調を維持するのは困難との見方があります。

今回の連邦公開市場委員会(FOMC)の声明文の主旨は、

  • 前回に比べ、経済の縮小ペースが鈍化したとの確信が強まった、
  • デフレリスクが後退し、ディスインフレ(※)の可能性が高くなった、
  • 金融市場の環境改善が更に進んだ、
  • 資産買取プログラムの期間や買取枠は現状維持、

が挙げられます。全般的に経済や金融市場への評価が改善しているようです。

  • インフレが収束し物価がほぼ上がらなくなった状態

図表1

出所:FRB
4月のFOMC声明要旨 今回のFOMC声明要旨
景気動向 経済の縮小ペースは幾分鈍化したと見られる。 経済の縮小ペースが鈍化しつつある。
インフレ 当面は長期的な経済成長と物価安定の促進に最適な水準を下回り続けるリスクも幾分ある エネルギー価格や商品価格は足元で上昇してきた。インフレがしばらく抑制されたままにとどまると予想している。
金融市場 金融市場環境が幾分緩和した。 金融市場の環境は総じて最近数ヶ月で改善した。
資産買取りプログラムの期間・規模について - 資産買取プログラムの期間延長や買取枠増額は盛り込まれず。

図表2

出所:ブルームバーグ

FRBは金融危機に対処するために、国債等の資産買取プログラムを通じて量的緩和を行っています。このため、FRBの資産規模(バランスシート)は急激に膨らんでいます。一時は、国債の増発懸念を受けた金利上昇圧力を資産買取プログラムが抑制したかに見えたのですが、今回の資産買取規模の据え置きもあり、長期金利は再度、上昇傾向にあります。

長期金利は、足元上昇傾向にありますが、それはむしろ、100年に一度の金融危機の真っ只中という異常事態の中で急低下した水準訂正とも考えられます。現在の経済環境といえば最悪期は脱し、消費者心理(図表3参照)や非農業部門雇用者総数(図表4参照)等がリーマンショック以前の水準に回復しています。従って長期金利がこれを反映し、当時の水準に回帰したのが現状の長期金利の姿と見ることも可能です。この程度の金利上昇であれば、むしろファンダメンタルズに沿った健全な金利上昇にも見えます。問題は今後も長期金利が断続的に上昇してゆくか?ですが、景気は最悪期を脱しただけであり、力強い回復にはほど遠い中では長期金利上昇にも自ずと限界があるように見えます。

図表3

出所:ブルームバーグ

図表4

出所:ブルームバーグ

図表5

出所:ブルームバーグ

FOMCの今回の声明文では、エネルギー価格や商品価格の上昇に言及していますが、インフレが大問題になるのは賃金インフレに波及した局面と考えられます。足元、賃金は低下傾向にあり、インフレが懸念される環境には見えません。むしろディスインフレ的な環境の中、長期金利が断続的に上昇してゆくことには自ずと限界があるように見えます。

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