金融市場ラインマーカー

米国長期金利の上昇は続くのか?

2009年06月15日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

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金融市場動向

現在、景気回復期待、インフレ期待およびコモディティ価格の反発、国債増発懸念などを背景に米国の長期金利が上昇しています。但し、国債需給懸念以外の要因が主導する持続的な金利上昇には懐疑的な見方があります。 国債増発を懸念した長期金利の上昇も金融当局の国債買い切り増額などにより抑制されるものと考えます。

ISM製造業新規受注指数は受注の拡大・縮小の分岐点である50を約1年半ぶりに上回りました。過去は1982年を除き、同指数が50を上回ると、その後は景気後退局面が終了していることが見られました(グラフ1参照)。ちなみに、1982年は2ケタのインフレを抑制するための利上げにより景気回復が頓挫しました。現在も景気回復期待が醸成される中、長期金利が上昇し、利上げ観測すら台頭しています。しかし、GDPの約7割を占める個人消費は家計の財務状況の悪化(家計の金融資産が目減りする中での過剰債務状況)に直面しており、今後は家計のバランスシート調整が見込まれ、個人消費に景気の牽引役を期待することは難しそうです。まだまだ脆弱な要素を抱えたままでの緩慢な景気回復下では、持続的な金利上昇の可能性は低いものと考えます(グラフ2参照)。

グラフ1

出所:ブルームバーグ

グラフ2

出所:ブルームバーグ

コモディティ価格の上昇がインフレ懸念を醸成し、これに連動し長期金利が上昇しています(グラフ3参照)。また、これを反映し1年後のインフレ期待がにわかに高まっています(グラフ4参照)。しかし、期待先行ではなく、実体経済の回復を背景とした本格的な「需要>供給」環境が到来しない限り、コモディティ価格の上昇には限界があり、インフレ期待もおのずと収束し、長期金利の上昇も抑制されるだろうと考えます。

グラフ3

出所:ブルームバーグ
※コモディティ指数:REUTERS/JEFFERIES CRB INDEX

グラフ4

出所:ブルームバーグ

グラフ5

出所:ブルームバーグ

インフレ動向のひとつの目安となる米フィラデルフィア連銀の製造業支払い価格指数および受け取り価格指数は、大幅に低下しており、企業の価格転嫁等の兆候は見られず、インフレというよりもデフレ的にすら見えます。現在のインフレ期待や金利上昇は、やや過剰反応のように見えます。

グラフ6

出所:ブルームバーグ

景気回復期待やインフレ期待を背景に、金利引き上げ観測すら台頭していますが、過去を見ると少なくとも、政策金利の引き上げは、非農業部門雇用者数がプラス域で安定した環境で行なわれていることがわかります。唯一の例外は1982年ですが、この時は2ケタのインフレを抑制することが優先されました。現状はまだ利上げの環境には至っていないものと考えられます。

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