金融市場ラインマーカー

米国の金利据え置きについて

2009年02月02日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

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金融市場動向

FRB(連邦制度準備理事会)は1月27、28日のFOMC(米国連邦公開市場委員会)で政策金利であるFFレートの誘導目標を0~0.25%のレンジに据え置くとともに、弱い経済状態が続く限り、将来も現行の金融緩和状態を維持することを約束する「時間軸効果」を狙った方針を繰り返し表明しました。また景気については「一段と弱まった」との判断を下しました。

(表1)FOMC声明要旨

  声明のポイント 含意(インプリケーション)
FRBによる国債購入について FRBによる国債の買い入れが、民間クレジット市場の状況を改善させる上で特に有効であることを示唆する場合は、より長期の財務省証券を購入する用意がある。 前回FOMCの声明文よりも、国債購入については踏み込んだ表現にはなった。ただ、現在、民間クレジット市場が改善の兆候を見せる中でもあり、今局面での実施には至らなかった模様。
金融危機について 一部の金融市場の状況は流動性を供給し、金融機関を強化するための政府の努力も映して改善した。 FRBによるMBS購入等によりモーゲージ金利の押し下げが図られてきた。今後も必要に応じて国債の購入等を含む、FRBのバランスシート拡大を通じて、流動性供給が実施されると見られる。
量的緩和について 理由のある状況となれば、GSEやMBSの購入量を拡大し購入プログラムの期間を延長する用意がある。 量的緩和の一層の拡張
デフレリスクについて インフレ率が長期的に経済成長と物価安定を最も促進する水準をしばらく下回り続けるいくらかのリスクがある。 デフレへの懸念が台頭し始めた模様
  • GSE:政府系住宅金融機関 MBS:住宅モーゲージ担保証券

(グラフ2)1年後のインフレ期待と米国の実質政策金利

出所:ブルームバーグ

今回の声明では、「インフレが長期的な経済成長や物価安定に資する水準の金利を下回るリスク」に言及がありました。これは、言い換えればデフレへの懸念であり、実質金利の上昇懸念でもあります。この状態はグラフ2で観測されます。つまり、インフレ期待は急低下し、実質政策金利が上昇しています。景気が後退する中での実質金利上昇を回避するため、今後もFRBのバランスシート拡大を通し更なる対策が打ち出されるのでしょう。

今回のFOMCで市場が特に注目したのは、FRBによる国債購入の可能性でした。オバマ新政権では巨額の景気刺激策が実施される見込みですが、これに伴い政府支出が増大し、財政赤字の大幅拡大は避けられない模様です(グラフ3参照)。当然ながら、このことは国債の増発につながり、需給懸念から金利上昇要因となります。この懸念を反映してか、昨年末以降、米国金利は長期ゾーンを中心に上昇傾向にあり、イールードカーブはスティープ化(利回り曲線の傾きが急になる状態)しています。長期金利上昇/イールードカーブ スティープ化の背景がリスク許容度の改善や、景気回復であれば健全でありFRBによる国債購入の必要性はありません。しかし、国債増発による需給悪化懸念だとしたら、それは悪い金利上昇となります。このため景気減速下で、民間クレジット市場の機能不全を再発させかねない長期金利上昇を牽制するために、FRBによる国債購入が市場の注目を集めているのかもしれません。米国の長短金利スプレッドと財政状況の対GDP比には密接な関係があるため、注意が必要です(グラフ4参照)。

(グラフ3)米政府の歳出・歳入 対GDP比

出所:ブルームバーグ

(グラフ4)米長短金利スプレッド(10年-2年国債金利)と財政収支

出所:ブルームバーグ

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