金融市場ラインマーカー
米国の利下げについて
2008年12月19日号
- 金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。
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12月16日に実施された米国の利下げに今回は焦点を当てました。
12/16のFOMC(米連邦公開市場委員会)では、政策金利(FFレート)の誘導目標にレンジ制が導入されました。特定の金利水準ではなく、レンジの誘導目標を設定したのは初の試みです。また、レンジの下限が0%に設定されたことは、事実上のゼロ金利政策への移行を意味します。また、将来も現行の金融緩和を維持することを約束する「時間軸効果」を通し、より長期の金利の押し下げを意図したものと考えられます。加えて、信用市場と経済活動を一段と支援するため、FRB(連邦準備制度理事会)のバランスシート活用の手段を検討してゆくとし、量的緩和の一層の拡張も示唆しました。
声明のポイント | 含意(インプリケーション) |
---|---|
FFレートの誘導目標を従来の「1%」から「0~ 0.25%」のレンジに引き下げる | 事実上のゼロ金利政策への移行(レンジ導入はFRB初の試み) |
弱い経済状態が続く限りは、現行の金融緩和状態を維持することを約束 | 時間軸効果の導入 |
今後の金融政策の焦点は国債、エージェンシー債、MBS(モーゲージ証券)の買取りや流動性供給制度によるFRBのバランスシート拡大になる | 量的緩和の一層の拡張 |
FRBの総資産の状況

金融システムへの流動性の供給を意図した一連のファシリティー(※)導入を受けて、FRBのバランスシートは資産が急拡大し2兆ドルの大台を突破しました。今後も国債、エージェンシー債、モーゲージ証券等の買取りが実効される可能性が高くFRBの資産は更に拡大するものと見込まれます。
- TAF(金融機関からFRBへのターム物入札による担保付き貸し付け)、PDFC(プライマリーディーラー向けFRB貸付)、ディスカウントウィンドー(金融機関の資金調達が困難になった場合FRBから借り入れを行える制度)など
米国GDP

今局面の金融危機は金融機関の破綻が相次ぎ信用収縮と景気の悪化という負のスパイラルが起きているという点において大恐慌(1929年8月~1933年3月)と比較されます。大恐慌の最中、金融当局は金融緩和や財政出動を実施せず事実上、無策であったため危機が深化し約3年半もの長期に渡り景気は後退しました。そして1933年3月になり、ようやく金融緩和、量的緩和、財政出動が実施され危機は収束に向かいました。今局面では、金融危機が表面化した2007年12月以前(2007年9月)から金融緩和を前倒しで実施し、その下げ幅は既に4%を上回っています。これに加え、量的緩和への移行がなされました。当局の対応は、大恐慌時と比較し明らかに迅速であり、また加えてオバマ次期政権で大規模な財政拡大が予想されることから、今局面が2000年台の「大恐慌化」する可能性は限定的と見たいものです。
大恐慌時と今局面との当局の金融政策
金融緩和開始時期 | 量的緩和開始時期 | |
---|---|---|
大恐慌時(1929年8月~1933年3月) | 1933年3月から | 1933年3月から財務省保有証券の買取を開始し、流動性供給を開始 |
今局面(2007年12月~) | 2007年9月から | 2008年10月にFRBが準備預金への付利を開始し、事実上、量的緩和が可能な環境に。 |
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