金融市場ラインマーカー
米リセッションと米国株/金融危機と円の関係
2008年11月17日号
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米国ではリセッション(2四半期連続のGDPマイナス成長)観測が高まっています。これらを背景に米国株には下方圧力が強まっています。そこで、過去のリセッション期間と当時の株価(S&P500)リターンの関係を検証してみました。また、現在のような金融危機局面での円実効レートの推移の特徴について検証してみました。
米国の第2Q(7-9月期)GDP成長率はマイナス0.3%となりました。10-12月期もマイナス成長を見込む向きが多く、米国のリセッション入りが濃厚になってきました。グラフ(1)は過去のリセッション期間の米国株のリターンを表していますが、むしろ上昇しているケースが多いことがわかります。一方、グラフ(2)はリセッション前の四半期(3ヶ月間)の同数値です。こちらは全てマイナスリターンとなっています。株価は6ヶ月先から1年先を織り込む特性があると言われていますが、グラフ(1)(2)はそのことの一例を示しているのかもしれません。つまり、リセッション前の四半期(3ヶ月間)は、リセッション入りを株価が事前に織り込み、実際のリセッション入り後は、その先の景気回復を株価が織り込んでいるのかもしれません。ちなみに、世界一の投資家と賞賛されているウォーレンバフェットは10/17日に「多くの健全な米企業の長期的な成長力に対する過大な懸念は愚かしい。数年後には多くの企業が最高益を出しているだろう。米国株を今買い増している」と述べています。
(1)過去の米リセッション期の株価リターン

(2)リセッション前四半期の株価リターン

(3)過去の金融危機と円実効レートの推移

円は金融危機局面で高くなる特性がある通貨と考えられています。グラフ(3)は過去の金融危機が起きた日の円実効レートを100として指数化し、その後の約2年半の円実効レートの推移ですが、いずれの局面でも金融危機後の初期反応は円高に振れる傾向が見られます。表(4)はその際の円の高値までの騰落率とその期間を示しています。サブプライム問題の収束がいつになるのかは不明ですが、現在と同じく悲観論が蔓延していたLTCM(ヘッジファンド)破綻後の値動きが一つの目処になるかもしれません。
(4)過去の金融危機と円実効レートの推移
金融危機名 | 発生日 | 円騰落率 | 円高ピークアウトまでの期間 |
---|---|---|---|
LTCM破綻 | Sep-98 | 43% | 526営業日 |
ブラックマンデー | Oct-87 | 11% | 157営業日 |
メキシコ通貨危機 | Dec-94 | 19% | 87営業日 |
エンロンワールドコム会計問題 | Feb-02 | 9% | 117営業日 |
サブプライム問題 | Jun-07 | 36% | 364営業日 |
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