金融市場ラインマーカー
米国政策金利据え置き発表(2%)について
2008年09月18日号
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FRB(米連邦準備制度理事会)は、9月16日に政策金利であるFFレートの誘導目標を現行2%のまま据え置くことを発表しました。今回はこの点に焦点を当てました。
今回の声明文(9/16)は前回(8/5)時点の声明文と比較し、金融市場および景気の両面で悪化が進んだとの主旨が表明されました。また、インフレと景気のバランスでは、インフレリスクが後退し、景気後退リスクがより悪化したことをにじませた模様です。8/5時点では、FRBは次の金融政策は「利上げ」になると想定していましたが、今回の声明内容を見る限り、その可能性は後退したと考えられそうです。
前回声明文と今回声明文の主要な変更点
前回(8/5)FOMCでの声明 | 今回FOMCでの声明 | |
---|---|---|
金融市場について | かなり圧迫された状態 | 緊張が著しく高まった |
インフレについて | インフレ期待の一部指標は高止まりしてきた | 左記声明文が削除された |
労働市場について | 一段と軟化 | 一段と弱まった |
金融政策姿勢について | 経済金融動向を監視し続け、持続可能な経済成長と物価安定を促進するために必要に応じて行動する。 | 経済金融動向を注意深く監視し続け、持続可能な経済成長と物価安定を促進するために必要に応じて行動する。 |
前回FOMC時点と今回FOMC直後の米国債利回り曲線

リーマン・ブラザーズの倒産に対し、救済策としての公的資金は投入されませんでした。この事実から、一部の市場参加者は、当該案件はシステミック・リスク(※)が相対的に小さいのだろうと推測した模様です。だから、市場救済策としての利下げは、今回は見送られると考える向きがあったようです。システミック・リスクの物差しの一つであるイールド・カーブの傾斜はリーマン・ブラザーズの倒産後、急(スティープ化:2年金利低下幅>10年金利低下幅)にはなっていますが、史上最大の倒産規模の割りには、パニック的な動きにはなっていない模様です。
- 1つの金融機関や証券会社の倒産等による決済の不履行が他の市場参加者に波及し、決済システム全体あるいは金融システム全体を麻痺させるような危険をシステミックリスクといいます。
1年後のインフレ期待

今回の声明文では、コモディティ価格の反落もあり、前回の声明文で見られた「インフレ期待の一部指標の高止まり」という一文が削除されました。実際に、今後1年後までのインフレ期待も急速に低下しました。
次回FOMC(10/29)時点のFFレート予想確率(9/16時点)

リーマン・ブラザーズの経営破綻直後の9/15時点での次回FOMCでの0.25%利下げの確率は88%にもなっていましたが、9/16のFOMC直後には32%に低下。一方、同据え置きの確率が68%に上昇しました。
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