金融市場ラインマーカー
ユーロ圏の政策金利4.25%据え置き決定について
2008年08月11日号
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ECB(欧州中央銀行)は、8/7の定例理事会で政策金利を4.25%のまま据え置くことを決定しました。今回は、この点に焦点を当てました。
今回の据え置きは、前回7月3日の利上げ実施時点の、ECB総裁の声明「今後については、金融政策のバイアス(方向性)は有していない」もあり、予想通りの据え置きとなりました。今回のECB総裁の声明は、前回と比べると、景気に対する見方が弱気に傾いたといえます。このため、今後の金融政策は、6月5日時点で表明されたインフレへの警戒と景気への配慮の両にらみでの運営となるのでしょう。このため、当面、金利は据え置かれるとの見方をする向きが増加した模様です。
(1)直近3回の金融政策とECB総裁の声明
トリシェECB総裁の金融政策に対する姿勢 | 金融政策の結果 | |
---|---|---|
6月5日 | 「インフレへの警戒を強めた状態」「7月利上げの可能性を排除しない」 | 据え置き |
7月3日 | 「今後については金融政策のバイアスを有していない」「緩やかな経済成長が続くと予想」 | 0.25%利上げ実施 |
8月7日 | 「今後については金融政策のバイアスを有していない」 「4-6月期と7-9月期の景気が特に弱くなるとはっきり認識している」 |
据え置き |
(2)直近3回の定例理事会時点の欧州国債利回り曲線

6月5日時点でのECB総裁の声明は、7月の利上げを示唆する内容だったため、当時のイールドカーブ(利回り曲線)は金融政策の先行きを敏感に反映する2年ゾーン金利の上昇幅が大きくなりました。7月3日時点では、利上げが予想通り実施されましたが、ECB総裁は8月の利上げを示唆しなかったため、同2年ゾーン金利の下げ幅が大きくなりました。そうして今回は、景気の弱気論が表明されたため、2年ゾーン金利の下げ幅が大きく、イールドカーブは2年ゾーン以降でブルスティープ化(2年金利低下幅>10年金利低下幅)しました。
欧州中央銀行は、長期に渡り、企業の収益性が維持されていることや、設備稼働率が高水準にあることを理由に投資が経済活動を下支えすると述べ、景気への自信を表明してきました。しかし、今回のECB総裁の声明では、従来の景気に対する自信の表明が、なりを潜め、逆に景気の弱気論が表明されました。これはECBとしては異例な声明です。実際、企業の景況感が急激に悪化していることや(3)、設備稼働率の勢いが後退している(4)こと等がECBの景気判断に影を落とし始めたと見られます。
(3)ユーロ圏企業景況感指数と鉱工業生産

(4)ユーロ圏設備稼働率(※)

- モノを作るセクターの活動を示す重要指標で景気に敏感に反応する
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