金融市場ラインマーカー
バーナンキFRB(連邦準備制度)議長の異例のコメント
2008年06月05日号
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6月3日のバーナンキFRB議長のコメント「財務省と共に為替市場の動向を注意深く監視している」「ドルの変動がインフレとインフレ期待に及ぼす影響を注視している」を受けて、ドルは上昇しました。通常、米国の通貨政策は財務省が担っているため、たとえ、インフレ要因の一つとしてドル安に言及したとはいえ、FRB議長がドル安牽制ともとれる発言をしたことは極めて異例と見る向きが多いようです。今回は、この発言を巡る示唆について分析してみました。
4月初旬のG7声明を皮切りに、それ以降、バーナンキFRB議長はじめ、FRB理事が相次いで「インフレ圧力」に警戒を表明しています((2)参照)。通常インフレ抑制には図(1)の四角囲い部分のように金融引き締めが実施されます。これに連れ、金利面からドルが上昇し、金融引き締め+ドル高がインフレの抑制要因となります。
しかし、現在はインフレ圧力が強まる中で金融緩和が実施され、かつ、ドル安が進んでいます。この状況は、図(1)の丸囲い部分と同じく異例な事態となっています。このまま金融緩和や更なるドル安が進行すると、バーナンキFRB理事はじめ他のFRBの理事が懸念するようにインフレ上昇を助長させることになりかねません。図(1)の丸囲い部分の1995年当時は、インフレを助長させる要因の一つであったドル安を回避する目的もあり、米国通貨当局はドル買い介入を実施しています。今局面でも、インフレ懸念とドル安懸念が米国当局を中心に表明されています。
(1)主要国中央銀行のインフレ目標

(2)G7声明及び、米当局者のコメント
- 4/11:G7声明
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「インフレに対する強い懸念を共有。主要通貨の急激な変動が経済及び金融の安定へ与える影響について懸念している。」
- 4/16:米フィラデルフィア連銀プロッサー総裁
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「インフレは懸念材料だ。過度に緩和的な金融政策が長引けば、インフレ圧力が高まる」「現在の金融政策は緩和的だと思う。」
- 4/15:ウォーシュFRB理事
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「インフレの状況を注意深く監視している。当局の流動性供給は市場の緊張を緩和した。」「限度以上の利下げを求めるべきでない。」
- 5/15:米サンフランシスコ連銀イエレン総裁
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「インフレは懸念事項だ。この先のインフレを注視する必要がある。」
- 5/29:米ダラス連銀フィッシャー総裁
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「インフレ動向やそれより重要なインフレ期待が引き続き悪化した場合、景気が低調であっても早期に金融政策の方向性の転換が図られると予想している。」
- 6/3:バーナンキFRB議長
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「ドルの変動がインフレとインフレ期待に及ぼす影響を注視している」
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