金融市場ラインマーカー

米国の利下げについて

2008年05月02日号

金融市場の動向や金融市場の旬な話題の分析と解説を行います。

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金融市場動向

FRB(米連邦準備制度理事会)は4月30日に、政策金利であるFFレートを0.25%引下げ、2.00%に設定することを決めました。声明文に対する市場の解釈は、「利下げ打ち止め」ではなく、昨年9月以降の断続的な利下げの効果を見るための「一旦の利下げ休止」と見る向きが多いようです。今回は、声明文の内容を前回の声明文と比較した上で、FOMC(米連邦公開市場委員会)の声明文から読み取れることを紹介したいと思います。

1.FOMC声明文:前回と今回の比較

景気に対する声明文

前回FOMC(3月18日) 景気見通しが一段と軟化したことを示している。個人消費の伸びは減速し、労働市場は軟化した。金融市場はかなりの緊張の下にあり、信用条件の収縮と住宅不況の深化が今後数四半期間に亘って、経済成長を下押しする可能性が高い。
今回FOMC(4月30日) 経済活動が依然として弱いことを示している。家計および企業の支出は抑制されており、労働市場は一段と軟化した。金融市場はかなりの緊張の下にあり、収縮した信用条件と住宅不況の深化が今後数四半期間に亘って、経済成長を下押しする可能性が高い。

評価

景気に対する声明文は(1参照)、前回と比較しても軟調なトーンで変化がない上に、「労働市場が一段と軟化した」と評価しています。その一方、金融政策に対する声明文では、前回見られた「景気に対する下振れリスクが残っている」との表現が今回は削除されました。

インフレに対する声明文

前回FOMC(3月18日) インフレは高止まりが続いており、インフレ期待にかかわる一部指標は上昇した。FOMCは、今後数四半期間に、予想されるエネルギー・その他商品価格の安定や生産要素の稼動に対する圧力の緩和を反映し、インフレが鈍化すると見込んでいる。それでもなお、インフレ見通しについての不確実性が増大した。
今回FOMC(4月30日) コアインフレ指標は幾分改善したが、エネルギー・その他商品価格が上昇し、インフレ期待にかかわる一部指標は最近数ヵ月間に上昇した。FOMCは、今後数四半期間に、予想されるエネルギー・その他商品価格の安定や生産要素の稼動に対する圧力の緩和を映して、インフレが鈍化すると見込んでいる。それでもなお、インフレ見通しについての不確実性が高いままである。

評価

インフレに対する声明文では(1参照)、インフレを警戒するトーンは前回声明文と比較して大きな変化は見られません。今回の声明文では、新たに、エネルギー・その他の商品価格の上昇に言及しています。インフレ警戒下で現局面は、金融危機や景気の減速に配慮した断続的な利下げを実施してきましたが、これは通常は異例な措置といえます。このため、今後はインフレ警戒を視野に入れた金融政策に軸足をシフトする布石と言えるのでしょうか。

金融政策姿勢に対する声明文

前回FOMC(3月18日) 本日の政策措置は、これまでにとられた措置(市場の流動性を促進するための諸手段を含む)と相俟って、今後、適度な成長を促進し、経済活動に対するリスクを軽減することを助けるはずである。しかしながら、景気に対する下振れリスクが残っている。FOMCは、持続的経済成長と物価の安定を促進するため、必要に応じてタイムリーに行動するだろう。
今回FOMC(4月30日) 現在までの金融政策の大幅な緩和は、市場の流動性を促進するために進行中の諸手段と相俟って、今後、適度な成長を促進し、経済活動に対するリスクを軽減することを助けるはずである。FOMCは、経済・金融情勢をモニターし続け、持続的経済成長と物価の安定を促進するため、必要に応じて行動するだろう。

評価

金融政策に対する声明文では(1参照)、これまで、大幅な利下げを実行済みであることが追記されました。また、前回声明文に記載されていた「(金融緩和は)必要に応じてタイムリーに行動する。」という表現から「タイムリー」という表現が今回は削除されました。このことから、「FRBは、昨年9月以降断続的に行われてきた大幅な利下げの効果を今後は見たがっている」と考える市場参加者が増えているようです。要約すると、今後は、断続的、タイムリーな利下げ姿勢から様子見姿勢への移行と言えるかもしれません。

実質政策金利

出所:ブルームバーグ
実質FFレートはコア消費者物価を使用して算出

2月29日にバーナンキFRB議長は「実質マイナス金利の長期化は望ましくない」とコメントしています。現在の実質政策金利は、約7年振りにマイナス金利となりました。今後もし、インフレが加速した場合は、マイナス金利の度合いが大きくなり、バーナンキFRB議長の意向に反することになります。このことも、「利下げ休止観測」を補足するものといえるかもしれません。

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