第2章 欧州不安で世界はどうなる?

欧州の債務悪化懸念の発端は、ギリシャの国家レベルでの粉飾疑惑にあります。2009年10月に、ギリシャで政権交代が起きると、新政権が2009年の財政赤字(対GDP)見通しを3.7%から12.7%に引き上げました。投資家はギリシャが破たん、もしくはユーロから離脱を迫られるのではとの懸念を強め、国債の処分を急いだことから、利回りが急上昇(国債価格が急落)しました。こうした懸念は、財政赤字の大きい、アイルランド、ポルトガル、イタリア、スペインへと波及し、各国の利回りは上昇しました。

その後、2010年にEU(欧州連合)とIMF(国際通貨基金)がギリシャに対する支援を行ったほか、2011年にはギリシャに対する追加支援、欧州の債務危機を克服する包括戦略などが打ち出されました。2012年6月に実施されたギリシャの再選挙では、緊縮財政派が議席の過半数を獲得したものの、財政再建の遅れやユーロからの離脱懸念は根強く、根本的な解決にはほど遠い状況が続いています。

こうした欧州の債務危機の背景には、異なる経済成長力や財政状況の国を一つの通貨で統合したことにあります。他国と比較して財政状況が悪いギリシャ国債は高い利回りが要求されるため、平時であればユーロで投資できる投資先としては魅力が高く、周辺国の金融機関などから大量の資金を集めたものの、現在ではそれがむしろ多大なリスクを抱える要因となっています。また、ギリシャが独自の通貨をもっていれば、通貨の切り下げなどを含めた独自の金融政策を駆使することができますが、ユーロを使用している限り、ギリシャはそうした政策をとることができません。そのため、財政赤字の削減目標などがなかなか達成できない状況にあります。

リーマンショック後の景気後退を受けて、欧州各国のみならず、先進国の多くの国で金利の引き下げなどの金融緩和の実施と、財政出動を行いました。その結果、米国などを多くの国で、国の借金がGDPとほぼ同水準にまで上昇しています(図1−1)。金利の引き下げは限界に近づいているため、景気回復には今後、さらなる財政出動が必要ですが、さらに借金を膨らませることはその国に対する信認が低下するというリスクをはらんでいます。先進国の多くは経済成長率が低く、経済成長に伴う税収の拡大が期待できないため、一度大きく膨らませた借金の返済をすることは容易ではありません。そうした意味では、他の先進国においてもいずれ欧州と同様な問題に直面する可能性もあります。そのため、足元で起きている状況だけにとらわれずに、国(地域)、通貨、資産の分散投資を行っておくことが今後の投資を考えるうえで重要な要素といえるでしょう。

(図1-1)
国別債務残高(対GDP比) 《 提供:モーニングスター(株) 》

(図1-1)国別債務残高(対GDP比)《 提供:モーニングスター(株) 》

※「World Economic Outlook July 2012」(IMF)より

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