2010年03月29日号
3月23日付けの日経新聞に、「中国の温家宝首相が 『中国は絶対に貿易黒字を求めない。あらゆる手段を使って輸入を拡大する』と述べた。貿易黒字を削減する手段として人民元相場の切り上げを迫る米国への反論とみられる。」とあります。中国が元切り上げを頑なに拒むのは、「米国に強要されたのでは面子が立たないから」等いろいろな要因があると思われますが、その一つに「2005〜2008年の元切上げ時にバブルを発生させてしまった」という苦い経験があるからと考えられます。
左下の図を見ると、2003年頃から対ドル中国元1年NDF(1年先の差金決済型通貨先物)は現物の元/ドルレートより元高方向に振れています。これは、中国の工業化が進んで貿易黒字が増大していくなかで、市場が中国元の先行き上昇を予想するようになったことを示しています。当時中国は実質的に固定相場制をとっていたため、市場の元高圧力に対抗するために、ドル買い/元売り介入を行っていました(右下の図で外貨準備純増を示していますが、これがほぼ介入額と考えられます)。
貿易黒字は拡大を続けたため、2005年7月に中国当局は元切り上げに踏み切ります。ただ、徐々に元を切り上げる管理的な変動相場制をとったために、ドル買い/元売り介入を続ける必要がありました(この間外貨準備が増加しています)。この「ドル買い/元売り」は、その分資金吸収オペレーションによって不胎化しなければ、市場に中国元を大量に供給することを意味します。
この時、充分不胎化されなかったであろうマネー(中国元)が株式市場に大量に流れ込み、2005年の切り上げ開始時は約1000ポイントだった上海総合指数が2年間で6倍の約6000ポイントにまで急騰するというバブルを生んでしまいました(右下図参照)。バブルは実態が伴わなければ、いつかは弾けます。上海総合指数はその後1年間で2000ポイントを切るまで急落してしまい、当局は為替介入によるマネーに振り回されるという失態を演じてしまったのです。
現状に戻ると、中国の株価は落ち着いた動きをしてますが、一部不動産価格が上昇しており、資産バブルが発生しているのではないかと心配されています。中国当局は、為替政策において前回と同じやり方で同じ間違いを繰り返すことは避けたいという気持ちがあると考えられます。
中国元と貿易収支

出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成。
中国元と外貨準備純増

出所:ブルームバーグのデータをもとにニッセイアセットマネジメント作成。